ステーキからおいしさを読み解く

おいしいものを食べたい、と思った時、私たちは近くの食品スーパーに行ったり、あるいは食材を取り寄せしたり、外食をしたりするでしょう。しかし、一般に流通しているもので満足できない時や、お金を出しても手に入らない時に、現代社会で何ができるのでしょうか。おいしいと思うステーキを食べるために取った、究極の行動を記した一冊を紹介します。

おいしいステーキを食べるために取った「究極の行動」

『ステーキ!世界一の牛肉を探す旅』著・マーク・シャツカー 翻訳・野口深雪(中公文庫、2011年)

ステーキは肉を焼くだけの料理ですが、肉の部位や牛の育て方によっても味が変わりますし、最近の日本では、肉を熟成させることでうまみを増す方法が注目を集めています。また、日本人は脂身の多い和牛を好みますが、外国では赤身の肉が好まれたりするなど、地域の文化による違いや、年齢によっても好みに変化があります。

カナダ人の著者は、昔食べたステーキがおいしかったことを思い出し、今のステーキが物足りなく感じたことをきっかけに、究極の一枚のステーキを探して、様々な試みをしていきます。牛の品種の違い、部位の違い、餌の違い、育て方の違い、焼き方の違いなどを踏まえて、7カ国を訪ね、実際にステーキを食べ比べます。当然、価格や手に入りやすさも違い、味わいも異なります。

しかし、7カ国で味わったステーキはそれぞれがおいしいものの、自分自身の究極の一枚とはならず、著者は最後に牛を自分で育てることを決め、実際に育て始めます。そして、どのような育て方が良いのか、また屠殺する際の最良の方法まで探究していくのです。

おいしいステーキを探す、というシンプルな話の中に、現代社会での大量流通の限界や、効率的生産の限界、また命を食べるという意味、そして文化の違いなど、読み方によって様々な気付きを与えてくれます。