食とグローバル化から地産地消のメリットと課題を考える
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立命館大学食マネジメント学部 教授
谷垣 和則(たにがき かずのり)
専門は国際経済学でこれまで、直接投資や国際間資本移動の研究をしてきました。最近は、食の購買・調理・廃棄行動、食の収斂化など、経済学の食への応用分析です。この他、食関連の起業をしています。好きな食べものは、あわび、ピザ。
地産地消は、地元産の食材を利用することで、食料自給率の向上、消費者と生産者において双方の顔が見えることによる安心安全、輸送から発生するCO2削減による地球温暖化対策、地域振興や地元の伝統的な食文化への理解などに繋がると言われています。最近の食品スーパーには、地場農産物コーナーが設置され、地域の食材を使った様々な試みが行われています。
一方グローバル化は、比較優位な財サービスを、各国が相互に提供するという国際的な分業体制を構築し、IT技術などによって、一層進展しつつあります。グローバル化によって我々は多くの恩恵を受けています。海外から安価で良質なものや日本では手に入らないものが入り、食の種類を増やして、食生活を豊かにします。かつては日本酒だけであったお酒が世界中のお酒が飲めるようになったのはその例になります。グローバル化は消費が地元産だけではないこと意味しますので、地産地消は昔の自給自足の逆方向になります。
しかし、グローバル化には負の側面があります。従来の地元産が売れなくなり、この結果地域や国独自の食文化が衰退し、人々のもつ誇りやアイデンティティに影響を与えることがあります。海外ではマクドナルドによる途上国への食文化の浸食が指摘されています。負の側面にはこの他、文化多様性の喪失があります。ユネスコの文化多様性条約に関して、日本やアメリカは批准しない少数の国です。地産地消だけではなく文化多様性を守り促進するという点からも、地産地消の振興は大切です。生物多様性条約と同様に、グローバル化によって食文化の多様性が失われることへの、世界的な危機感が背後にあります。
地産地消はこのようなグローバル化の負の側面への人々の潜在的な意識があると考えられます。ところが、地産地消と言っても、地元産だけでは消費者が購入するわけではありあせん。輸送費が掛からないといっても年々物流コストの低下や、品質管理能力の向上で、地元産の優位性は薄れています。
ビジネスとして後継者が存在し持続可能になるには、差別化やブランド化、安定した品質管理が必要で、これらを怠ると、結局掛け声だけで終わることになります。小規模で、大量生産できず、コストが割高になりがちなことから、他の国や地域と差別化が不十分で、特徴・知名度がなければ、収益性は低くなり、ビジネスとしては難しくなります。
グローバル化に対し、地産地消はそのデメリットを補うもので、多様性の促進によって世界の食を豊かにするだけでなく、地域や国の伝統的な食文化の維持発展に繋がります。地産地消にはこのようなメリットと、同時に持続性・実現性への課題があることに留意していただければと思います。
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