外食チェーン店での食事を「会計脳」で考えてみよう

多くの人が利用する、ハンバーガーや牛丼、回転寿司といった外食チェーン店。皆さんも、利用する機会が多いのではないでしょうか。今や外食産業は、人々の生活に欠かすことのできない存在になっています。そこに「会計」という目線を加えると、今までにない新たな発見があるかもしれません。

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  • 立命館大学食マネジメント学部 准教授

    酒井 絢美(さかい あやみ)

    専門は会計学。財務会計領域・監査論領域を中心に、企業分析、監査人、株式公開(IPO)や企業情報開示等の研究を行っている。好きな食べ物はクレームブリュレ。

1皿100円のお寿司を作るために必要なコストって?

例えば、子どもからお年寄りまで大人気の回転寿司。週末には多くの家族連れで賑わっていますね。その理由の1つが価格です。大手回転寿司チェーン店では、1皿100円(税抜)からお寿司が提供されており、好きなネタをたくさん食べられることが大きな魅力となっています。

ところで、この1皿100円のお寿司を作るには、一体いくらのお金がかかっていると思いますか? 100円のうち、マグロやハマチなど魚のネタやシャリ(酢飯、すし飯)など、いわゆる食べ物の「原価」と呼ばれる部分は、約40〜50円といわれています。しかし、お寿司を作るのにかかるお金は、実はこれだけではありません。

まず、どうしてお寿司を食べに行くのでしょうか? 昨日見たテレビのCMやSNSの広告かもしれません。このような、お客様をお店に呼ぶための広告宣伝活動にもコスト(費用)がかかっています。それに、お店そのものがないと、そもそも訪れることができませんよね。このお店を建てる建築費や、その土地を借りる家賃などもコストになってきます。

次に、お店に入ると、店内にはお客様を案内する人、お寿司を作っている人など、たくさんの従業員の方が忙しく働かれています。この従業員さんのお給料も、お寿司を作るために必要なお金です。それ以外にも、店舗の電気代やメンテナンス費用、新商品を開発するための試作費など、さまざまなコストがかかっています。これらを全部あわせると、1皿100円のお寿司には、なんと95円から97円もの金額がかかっているといわれています。すると、みなさんがお寿司を1皿食べることで企業がもうかるお金(利益)は、1皿あたり約3円~5円程度になります。想像していたよりも少なかったのではないでしょうか。

1皿のお寿司を会計脳で見ると、お皿の向こう側にある仕組みが見えてくる!

おいしい商品を世の中に提供し続けるためには、その企業がきちんと利益を生みだすことが重要となります。先ほどのようにたくさんの店舗を展開する外食チェーンの企業は、ギリギリの価格設定でできるだけたくさんのお客様に来てもらい、何千皿、何万皿という販売の積み重ねで利益を生み出しています。この、企業が利益を出しつつ、お客様がたくさん来てくれるための価格はいくらなのか、ということを考えるのに、「会計」というものの考え方がとても役に立ってきます。

みなさんもぜひ、次に外食する時には、自分がお店を経営していると思って、店内をじっくり眺めてみてください。きっと今までとは違う発見があると思います。