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バーチャルな世界(仮想空間)と「食」という実物が関わる業界は、まったく関係がない? そんなことはありません。バーチャルであっても、脳に印象は強烈に残ります。それは「食」に関する印象であっても同じことです。実は食関連企業においては、経営戦略上、今後はバーチャルな世界がとても重要になってくる可能性を秘めているのです。
アバター(自身のキャラクター)が生活し、「食事をとる」
『メタバース さよならアトムの時代』著・加藤直人(集英社、2022年)
「メタバース」という言葉を聞いたことがありますか?2021年頃からブームになっており、最近ではニュース等でも取り上げられるようになりました。メタバースというのは、簡単にいうと、オンライン上の仮想空間のことです。ユーザーは、その仮想空間でアバター(自分の分身となるキャラクター)を用いて、遊んだり、生活したり、さまざまな活動を行います。ビジネスに活用されることもあります。
メタバースは、あくまでもバーチャルな世界(VR:バーチャルリアリティ)ですから、アバターが寝ても自分自身の疲れが取れるわけではありませんし、アバターが食べても自分はお腹いっぱいにはなりません。…と、いうことは、食関連企業にとって、一見メタバースは意味のないもの、関係のないものに思えるかもしれません。しかし、実際には、外食産業を中心に、食関連企業もメタバースにかなり注目しています。なかには、メタバース内で仮想店舗をつくっている企業もあるくらいです。
これはなぜかというと、バーチャルな体験であっても、私たちの脳に何らかの印象は残るからです。しかも、これまでのような物理現実ではない分、かえって印象は強烈なものとなることもあります。企業にとって、消費者の印象に残ることがどれほど重要なことかは、言うまでもないでしょう。
また、VRと現実世界をつなげて楽しむユーザーも出てきています。たとえば、ユーザーが自分たちの好きなファストフードをVRで再現しつつ、現実にそれを食べながらオンライン上でアバターを用いて交流する、といったことは、現在すでに行われています。
いまや「食」はメタバースには関係がない、とは言っていられない時代です。現在、一般的に浸透しているVRは主に視覚と聴覚のみを活用するものとなっていますが、嗅覚に関する研究もどんどん行われています。近い将来には、仮想空間でのにおいを当たり前に感じられるようになってくるかもしれません。先日はVR対応の寿司型デバイスの誕生も話題になり、味覚に関しても技術革新が進められているところです。そうなると、食関連企業にとってメタバースというものはさらに魅力的になってくることでしょう。
「メタバースはこれから私たちの社会や経済、いや、生活そのものを覆い尽くす大きな波になる。誰もが無関係ではいられない大きな変化なのだ。
思い出してほしい。
私たちの生活はiPhoneの登場によって大きく変わった。今やスマートフォンがない生活は考えられないだろう。
iPhoneが登場する前に、こんな状況を想像できた人がどれだけいただろう。
同じような変化、いや、もっとすごい、大きな変化がこれから起こる。」(同書,pp.13-14)
食マネジメント学部 准教授 酒井 絢美
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